E-listBBSSearchRankingWallStreetGo to Top
Click

社大百科事典

BACK

ワシントン条約

 正式名称は〈絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約 Convention onInternational Trade in Endangered Species ofWild Fauna and Flora〉。略称 CITES。通称はこの条約採択のための全権会議が開催された地名にちなむ。

1972年6月,ストックホルムで開かれた国連人間環境会議の勧告の一つ〈野生動植物の特定の種の輸出,輸入及び輸送に関する条約案を作成し,採択するために,適当な政府又は政府間組織の主催による会議をできるだけ早期に召集する〉に従って,73年ワシントンにおいて,そのための全権会議が開かれ,3月3日,冒頭に示す名称の条約が採択され,75年7月1日より発効した。

 本条約は,規制対象とする動植物の種を条約の付属書に掲げている。すなわち付属書1 絶滅のおそれのあるもの,付属書2 必ずしも絶滅のおそれはないが規制を要するもの,付属書3 締約国が自国内で規制を行う必要があると認め,取引の取締り上,他の当事国の協力を必要とするものの3種に分類されるものである。

具体的には,輸出入の際,管理当局が輸出許可証の発行,チェックを行い,その際,科学当局が種の存続を脅かさないかどうかを判断することとしている。日本は会議の当初から参画したが,この条約の批准がひどく遅れ,80年にやっと国会の承認を得,同年11月4日より発効した。しかも水産業界,皮革業界などの関係業界との利害関係から11種類もの規制が留保された。

これは文明国としては例をみない多さで,この条約の効率を著しく減殺させるものと,内外からの批判が強い。この条約を各国で完全に施行させるべく IUCN(国際自然保護連合)は,野生動植物国際取引調査記録特別委員会(Traffic)を設け,その事務局,野生動植物貿易調査機構(WTMU)をイギリスのケンブリッジに置いた。その地域事務所ともいうべきトラフィック・ジャパンは82年6月,アジア地域で最初のものとしてWWFJ(世界自然保護基金日本委員会)に置かれた。

 97年6月現在,ワシントン条約締約国は135ヵ国である。日本は,野生動植物の生体および加工原料としての皮革,きば,骨,羽毛などの輸入量がとくに多い国なので,本条約発効以前から国際的にきびしい批判の目でみられていた。

ワシントン条約発効後も法の盲点をくぐったり,密輸入など法に反する行為が多くて,内外からの叱責(しつせき)を受けることが多く,適切な国内法の整備が要請されていたが,1987年,ようやく〈絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律〉が制定された。          

柴田 敏隆

(c) 1998 Hitachi Digital Heibonsha, All rights reserved.



ウイルス

 ビールス,バイラスなどとも発音される。核酸(DNA もしくは RNA)とタンパク質からなる,細菌よりも小さな一群の病原体。遺伝情報を担う核酸がタンパク質の外被におおわれた構造をもち,それぞれのウイルスに特有の宿主となる細菌や生物の細胞に寄生して,宿主のタンパク質合成能やエネルギーを利用して,自己増殖を行う。

ウイルスは,その大きさが数十〜数百nmときわめて小さく単純であることと,単独では生物としての要件である自己増殖能をもたず,寄生してはじめて自己増殖を行うことから,しばしば〈生物と無生物の間にあるもの〉と表現されることがある。また,ワクチンによる免疫療法を除くと,細菌などに対する抗生物質のように,ウイルス感染症に対する直接的な特効薬がいまだに発見されていないのも,ウイルスの独特な寄生性と自己増殖性によるものである。



エボラ出血熱

 1977年6月10日,厚生大臣の諮問機関である国際伝染病小委員会で決められた行政上の名称で,〈国内に常在せず,予防法,治療法が確立していないため,致命率が高く,かつ伝染力が強いので,患者及び検体の取扱いに特殊の施設を必要とする特定の伝染病〉と定義されている。

ラッサ熱,マールブルク病,エボラ出血熱の各ウイルス性疾患が該当する。これらはいずれも人獣共通伝染病で,サハラ以南のアフリカ諸国,とくに西アフリカに風土病的に存在するものとみられるが,院内感染での致命率が高いところから注目された。臨床症状による相互鑑別診断はまず不可能であり,マラリアや腸チフスとの鑑別も困難なことが多い。各ウイルスは最高危険度に分類され,ウイルス学的検査は高度安全実験室で行われ,患者も同じく高度安全病棟に収容する。以上の3病のうち,ラッサ熱,マールブルク病はそれぞれ別項目として扱ったので,それらに譲り,ここではエボラ出血熱について述べる。

 エボラ出血熱 ebola haemorrhagic fever はエボラウイルスによる全身性の急性熱性伝染病で,1976年スーダンとザイールで発生した。エボラウイルスはマールブルクウイルスと形態学的には同一であるが,抗原的には異なり,類縁ウイルスはなく未分類である。潜伏期間は4〜16日(平均7日)。ヒトへの感染,臨床症状,治療などについてはマールブルク病と同じである。
                  
今川 八束+山口 登

(c) 1998 Hitachi Digital Heibonsha, All rights reserved.

戻る      ホームページに戻る  

ペットいろいろに戻る